2018年10月の本

秋ですね。
今月は学会に参加したり、原稿を書いていたらあっという間にもう月末やん…という感じでした。
今回は大物揃いでした。くっそ金欠なのでみんな俺のリンクからお買い物してくれよな!

「今月の本」のルール

  1. 毎月読んだ本をリストにしてブログを更新。
  2. 専門的な論文などは除く。
  3. 読んだと言っても、必ずしも全頁を読みきったことは意味しないし、再読したものもある。
  4. とはいえ、必ず入手し、本文に少しでも目を通すことが条件。
  5. コメントを書くかどうかは時間と体力次第。
  • ジェラール・ベンスーサン『メシア的時間』

待望の名著の翻訳。私は学部生のときに、訳者のお一人である藤岡さんに教えられて、四苦八苦しながらつまみ読みした思い出の一冊。
本書における「世俗化されたメシアニズム」に対置される「時間化されたメシアニズム」の諸特徴(予期せぬもの・瞬間性・行為の緊急)やメシアニズムとは「人間ではなく、時間であり、さらには時間の時間性である」という議論には目を開かされた思い出。改めて読み直したい。

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原書を買おうと思っていたら、すぐに翻訳が出たというあれ。訳者には感謝です。
フッサールの超越論的観念論にこだわりつつも、関連する様々な領域での仕事も多い筆者による久しぶりのがっつりとしたフッサール研究というところか。思弁的実在論側へ反論した論文などは既に読んでいる人も多いと思うが、日本語で読めるようになったのは意義のあることだろう。

  • 丸山 空大『フランツ・ローゼンツヴァイク:生と啓示の哲学』

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ユダヤ思想のスターであるローゼンツヴァイクのモノグラフ。日本のユダヤ思想史研究の水準は非常に高く、これまた名著の佐藤貴史[asin:4862850758:title]』に続くものとなった。こちらも大著ゆえ、ゆっくり読んで学びたい。

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日本哲学の通史。明治前期の哲学受容史(第一章および第二章)にこれだけ頁を割いているのは実は希少。日本哲学の通史にかんしては現時点における決定版と見ていいだろう。

こちらも待望の翻訳。シェリングの『世界年代』は、『全体性と無限』における数少ない明示的な参照をされている本の一つで、その言及は第四部のC「繁殖性」の議論の冒頭に現れる。

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ヘーゲル強化期間なので。タイトルの通り、ヘーゲル以降のヘーゲル解釈――マルクスからフランス現代思想――に焦点を当てたもの。例えば、フランス系でヘーゲルいきなり読むの辛いなあという人なんかには痒いところに手が届く一冊なのではないか。類書もあれど、仲正先生の整理力はすごいものがあるので、まずは一読って感じで手に取ると良いんだろうと思う。

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某書評用に。バカロレアにかんする紹介をしつつ、幸福というトピックをもとに哲学史をおさらいして、実際に問題に取り組んでみよう!という本。幸福というトピックに絞ったのは慧眼だが、いかんせんその導入――日本人よりフランス人の方が主観的には幸福であり、その謎を哲学に求める――というのはやや強引か。

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某翻訳のために。翻訳の問題も論じられており、それなりにおもしろかった。

  • 東 浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』

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遅ればせながらというか、図書館で目に付いたので借りてみた。
地方の観光地で数年働き、親密圏とでも言うものについては哲学的主題として魅力を感じているので、関心に沿うものではあった。
第二部の家族の哲学は、やはりなぜ家族という名称にこだわる必要があるのか、考えてみないといけないだろう。

  • Mary Jeanne Larrabee ed., An Ethic of Care: Feminist and Interdisciplinary Perspectives

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読書会の文献。まだまだこれからだけど、ケア倫理は一応さらっておきたいし、場合によっては論文で扱いたい。

  • Walter Benjamin, Der destruktive Charakter(Gesammelte Schriften IV

(『ベンヤミン・コレクション〈5〉』)
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「破壊的性格」を読んだ。短いながらベンヤミンのなかではかなり好きなもの。
いつか『暴力批判論』をきちんと読み解いたりしたい。