2018年2月の本

2月の本です。今月はやや少なめで、入門書がほとんど。
真冬の津和野は雪、雪、雪という具合で、大変でした。朝起きて雪に埋まった車を見るのはもうたくさんです。
最近になって、ようやっと日差しもではじめて一安心というところ。花粉を除けば、これから一番良い季節になる。

専門的なところでは、碩学ジャック・タミニオー[Jacques Taminiaux]の論文などを読み返していた。タミニオーの論文は、仏語も英語もクリアで読みやすい。現象学に精通していることもあって、ハイデゲリアンでレヴィナスにも少し興味があるという人には、たとえば"The Presence of Being and Time in Totality and Infinity"なんかがおすすめ(英語だし)。
『全体性と無限』(のとりわけ第一部)をハイデガー存在と時間』への応答として読むという氏の解釈は、未だ鋭さを失っていないし、いま準備している論文でも一部取り扱おうかなと思っている。

「今月の本」のルール

  1. 毎月読んだ本をリストにしてブログを更新。
  2. 専門的な論文などは除く。
  3. 読んだと言っても、必ずしも全頁を読みきったことは意味しないし、再読したものもある。
  4. とはいえ、必ず入手し、本文に少しでも目を通すことが条件。
  5. コメントを書くかどうかは時間と体力次第。

https://www.msz.co.jp/_cover/magazine/667.jpg
毎年楽しみにしている読者アンケート号。これで異分野の良著を補充している(ほしいものリストにぶち込んで、あとでふと見返して買ってみたり)。
ニュースクール――20世紀アメリカのしなやかな反骨者たち』や『歴史ができるまで――トランスナショナル・ヒストリーの方法 (岩波現代全書)』、『紙と人との歴史:世界を動かしたメディアの物語』、『60歳からの外国語修行――メキシコに学ぶ (岩波新書)』などはぜひ読みたくなった。

  • Iris Marion Young, On Female Body Experience

On Female Body Experience: Throwing Like a Girl and Other Essays (Studies in Feminist Philosophy)

On Female Body Experience: Throwing Like a Girl and Other Essays (Studies in Feminist Philosophy)

フェミニズム現象学関連でもよく引用されるヤングの著作。
とりわけ、公的な領域と区別された、私的領域としての家に女性が長く釘付けにされていたというという歴史的な含蓄を批判しつつも、安定性や安全性といった家の概念に結びついている積極的な意味と価値の力を認めて分析しているのがポイントか。
住まうことや、家をもつことは、レヴィナス屋としても、地域コミュニティで生活する上でもなかなか重要な論点であり、かなり刺激を受けた。

マルクス生誕200年ということで。佐々木隆治先生の『カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)』とはまた趣きの異なるものなので、併読するのも楽しいのではないだろうか。

トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

ようやく手にとることができた。クリアだが、トマスを味わうことの愉しみも体験できる良著になっている。
とりわけて徳を巡る議論が勉強になった。

POSSE vol.37

POSSE vol.37

いただきもの。
我々も参加している「それぞれのまちで」というリレー連載第2回が載っています。今回は小松理虔さんの寄稿文。
自然が豊かで人も温かくてハッピー!みたいなありがちな昨今のメディアとは違い、「地方で生きる」ということの現実的な課題をご自身の経験から指摘した上で、それでもなお…を提示してくれている。地方ならではの勤務後の時間から緩やかな連帯を作り出す試みは、もっと注目されてよい。ほかにも10周年記念ということで盛り沢山の内容。

  • マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』

資本主義リアリズム

資本主義リアリズム

  • 作者: マークフィッシャー,セバスチャンブロイ,河南瑠莉
  • 出版社/メーカー: 堀之内出版
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
これは広く、気軽に、しかし切実ななにかをたしかに抉り出そうとしたものとして読んでほしい一冊だった。
フィッシャーは、現在の我々が生きている状況を「資本主義が唯一の存続可能な政治・経済的制度であるのみならず、今やそれに対する論理一貫した代替物を想像することすら不可能だ、という意識が蔓延した状態のこと」と説明し、そんな資本主義リアリズムのアポリアとして、メンタルヘルス官僚主義をもってくる。
本書のようなジェーナリスティックな論述には細かい批判もあるだろうか、大枠としてはたしかにそうだよねと強く頷かざるをえなかった。

  • 戸谷 洋志『ハンス・ヨナスを読む』

ハンス・ヨナスを読む

ハンス・ヨナスを読む

ありそうでなかったヨナスの入門書。
初期ヨナスのグノーシス研究は結構好きで何度か読んでいるものの、『責任という原理』はしっかり読んでいなかったので、ありがたかった。ヨナスの生涯を概観したあと、彼の未来倫理の中核を筆者が問題系ごとに整理し、提示するするというかたちになっている。
良い入門書を書くというのは、研究論文を執筆するのとは別の難しさがある。若手の研究者となると、どうしても自分の色を過度に出してしまいがちだが、戸谷さんはヨナスの思想を絶妙なバランスで解きほぐして伝えることに成功している。

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)

gaccohの西周講座の準備をするなかで、アレントに興味が出てきたので再読。
以前のハードカバー版?で読んだが、今なおバランスの取れた、優れた入門書であると思う。

  • 戸田山 和久『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』

kindle50%オフだったので購入。前から読みたいと思っていたのでありがたい。
まだほんと最初のところしか読めていないが、いずれ…

  • 高山 宏『近代文化史入門 超英文学講義 』

近代文化史入門 超英文学講義 (講談社学術文庫)

近代文化史入門 超英文学講義 (講談社学術文庫)

kindle版50%還元セールにて。学魔に触れるのはこれで二冊目くらいかもしれない。
これは隙間時間にちょっとずつ読んでいる。

甦るリヴァイアサン (講談社選書メチエ)

甦るリヴァイアサン (講談社選書メチエ)

こちらもkindle版50%還元セールにて。欲しいものリストの底の方にあったのでポチったが、以前読んだことがあるものだった…
とはいえ、大変名著なのでおすすめ。

  • 松浦 壮『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 』

こちらもkindle版50%還元セールにて。
一応時間の哲学なるものに関心をもつ者としてこのあたりも知っておきたいなあと思い、購入。まだ読めていない。

  • 橋本 陽介『物語論 基礎と応用』

物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

こちらもkindle版50%還元セールにて。
リクールを少しずつ読んでいることもあるので買ってみた。
サブタイトルの通り、第一部は理論編で主にフランス構造主義物語論が解説され、後半の第二部では様々なテクストを分析してみせるというもの。創作を志す人にもありがたい一冊になるように思う。

銀河鉄道の父 第158回直木賞受賞

銀河鉄道の父 第158回直木賞受賞

こちらもkindle版50%還元セールにて。直木賞受賞作。
宮沢賢治の父・政次郎に焦点をあてた類を見ないであろう作品。
彼の家族というのと、やはり妹のトシに注目しがちで、父にかんしては、それなりに儲かっていた質屋を営んでいたことや、法華経信仰の由来くらいしか気に留めていなかった。
父と子という古典的なテーマではあるが、もう三十路が近づきつつあるものの、両親には心配させてばかりいる私にとっては、チクチクと胸が痛くなることが二度三度ではなかった。