2017年9月の本

どうも、今月の本です。
以前も告知しましたが、関わった本が二冊ほど出ました。よろしければ、お手にとっていただけると幸いです。
今月はgaccohさんでの講義のために読んだものがほとんどでした。
一応(本職の)レヴィナス研究も論文構想が出来てきたので、ぼちぼちそっちも読み始めないとなあという感じ。
コメントの多い少ないは時間的なアレです。

「今月の本」のルール

  1. 毎月読んだ本をリストにしてブログを更新。
  2. 読んだと言っても、必ずしも全頁を読みきったことは意味しないし、再読したものもある。
  3. とはいえ、必ず入手し、本文に少しでも目を通すことが条件。
  4. コメントを書くかどうかは時間と体力次第。

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「それぞれの町で 第1回 座談会」に同僚の瀬下とともに参加しております。
「地方創生」ブームのなか、その流れをある面では引き受け活用しつつも、批判的な眼差しを捨てることなく実践するとはいかなることかを巡る貴重な座談会になっているかと思います。他にもソーハラや教員の労働問題、浅沼先生の「労働と思想」のシェリング論など盛りだくさんです。
とりわけ、浅沼先生によるシェリング論は、最新の研究と近年の思想動向(思弁的実在論)を解きほぐしながら紹介してくれるもので大変勉強になりました。なかでもシェリング=グラントの言う「自然」は、レヴィナスの元基(élément)とも響き合うように思え、そんな元基との関係にある種の実在論を読み込んだ私としては、かなり興味深く読んだ次第。
これまでシェリングについては、レヴィナスが言及している『世界年代』にしか関心を払っていなかったが、これを機に自然哲学の方にも手を伸ばしたいなと思った(実際にやるのはそりゃ大変だけども)。

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ついに出ました。私も訳者として末席ながら参加しております。
以前、近況告知のなかでも少し書きましたが、本書はいわゆる思弁的実在論界隈の中心人物の一人であるハーマンの基本書と言っても良いのではないでしょうか。監訳者である岡嶋さんを筆頭に、訳者一同読みやすい訳文を心がけたつもりです。ぜひよろしくお願いします。

  • 金友子『歩きながら問う―研究空間「スユ+ノモ」の実践』

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若手研究者のキャリア問題に少し取り組み始めたこともあって、韓国のスユノモには以前から注目しているが、この度やっと手にとることができた。ここ十数年にわたる我が国の高等教育や研究環境を批判的に分析する書籍や論文は多数あるものの、海外との比較だとやはりアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、中国が選ばれることが圧倒的な数を占めており、お隣の韓国の知的情況を知る機会はあまりない。仕事的にもスユ+ノモには結構強い関心を持ち始めている。

ヰタ・セクスアリス』は鷗外の自伝的要素を多く含むため、ほぼ評伝的研究となっており、故郷である津和野での調査内容も多く踏まえられているのが特徴か。作中の東先生のモデルは同郷にして親戚の西周であって、そんな西についてもまとまった頁が割かれている。

  • 菅野 覚明『武士道の逆襲 』

西周も登場するということで購入。
西の軍制整備の文書を読む中で、身分制が変わった明治においても「武士のエートス」なるものが、軍隊内でかたちを変えて保持されていったところにもともと関心があった。丁寧な説明だが、内容に重複が多くもっとコンパクトに出来たのではないと思う。

  • 菅野 覚明『神道の逆襲』

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上記の本の姉妹編ということで購入。サントリー学芸賞受賞作。
津和野藩は岡熊臣の登用もあり、元々神道国学の強いところであった。本書の「はじめに」で(否定的にではあるが)幕末神道の大物として紹介されている大国隆正も、藩校養老館教授をつとめた津和野人である。ちなみに、大国は儒学や洋学をも学んだ見識の広い国学者ではあったが、国学を本学と称すべしという改革案を掲げ、津和野本学を整備している。
伊勢神道から吉田神道垂加神道国学復古神道など神道をめぐる様々な水脈が、著者による「神さま」の定義を元に整理されており、随分勉強になった。北畠親房神皇正統記』の解説などもなるほどなと膝を打つことしかり。

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丸山眞男とは異なる仕方での政治思想史。西周もある意味では丸山学派の福沢諭吉推しによって隠れてしまった部分もあり、序章(丸山から遠く離れて)は読んでいてわくわくするものだった。続いて、第一章の「「演説」と「翻訳」――「翻訳会議の社」としての明六社構想」を。

  • 森岡 健二『近代語の成立』文体編・語彙編

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今更ながら読み、凄まじい研究と知る。

  • 沈国威『近代日中語彙交流史』

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資料としても持っておきたいと思い、購入。

gaccoh講座用に購入。

  • 安田 敏朗『「国語」の近代史』

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gaccoh講座用に再読。

  • 中島 隆博『思想としての言語』

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月末の出張にまとめ買いした本のなかで一番楽しみにしていた本だが、まだ読めていない。。

  • 苅部 直『「維新革命」への道: 「文明」を求めた十九世紀日本 』

第三章に西周も登場。
「末広の寿」というあまり有名ではないエッセイ調のテクストに着目するなど鮮やかな筆致で大変勉強になった。

明治以降、西周は山県のブレーンの一人として活躍したわけで、そんな山県本人の生涯を知りたいと思い、購入。

  • 酒井 直樹『日本思想という問題――翻訳と主体』

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以前図書館でざざっと読んだが、再読。

  • 眞嶋 亜有『「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験』

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先輩研究者に最近読んだ面白い本ということで、教えていただきたもの。
明治以降、いち早く海外へと知見の吸収にむかった「エリート」たちがいかなる人種差別を受け、そこから何を学んだのかをある種の系譜として描き出した快作。遠藤周作の個人的ベストは『留学』な私にはどストライクでした。

[asin:4326102004:detail]
紀伊国屋の『WM現代現象学』ブックフェアにて購入。まだはじめの部分しか読めていません。
「これまで現象学を勉強したきた人が心の哲学の典型的な入門書を読んでみたものの、どうもしっくりこない」人におすすめということで、これから読み進めるのが楽しみ。