2017年8月の本

今月の本です。
今月は鬼の原稿祭りだったのでそこまで読めませんでしたが、大変良い本が多く刊行された月だったように思えます。
コメントは少なめ…

ちなみに以下、「今月の本」のルールを明示化してました。過去のものも基本的にこのルールをすべて守っています。

「今月の本」のルール

  1. 毎月読んだ本をリストにしてブログを更新。
  2. 読んだと言っても、必ずしも全頁を読みきったことは意味しないし、再読したものもある。
  3. とはいえ、必ず入手し、本文に少しでも目を通すことが条件。
  4. コメントを書くかどうかは時間と体力次第。


最近、趣味の読書として「地方の文学」というテーマを自分なりに追っている。
伊豆の踊子』にせよ、『坊っちゃん』にせよ、都市の人間(筆者≒主人公)が地方へ行き、そこでの出会いや成長を書くものは多いが、地方で文学的な/学術的ななにかをやってんぞ!という今の自分たちの心意気のようなものを打ち出している作品や先駆的で革命的な文学を読み直したいという背景がある。
とまあそうは言っても、なかなか時間は取れないし、そこまで網羅的に読もうとも思ってはいないので、ふと思いついたものから暇を見つけて読んでいる次第。

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朱子学陽明学”というタイトルの入門書には何冊もあるが、小島氏のものを買ってみた。
元々は放送大学のテクストとして書かれてたもの。
本書は朱子学陽明学の思想的な解明、つまりは朱子学陽明学がどのように形成され、どう変質していっ たかを歴史的視点に立って整理する作業が中心になっている。


研究に近い部分では、マストバイと言えるものが多数刊行された。

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ユダヤがわかれば世界がわかる!」などという帯は果たして先生から了承をきちんと取ったのだろうか。
たしかに現代政治や国際情勢を理解する上で、ユダヤの歴史を知ることは欠かせないだろう。しかしそもそも本書の目的は、ユダヤの来歴や宗教内容などを簡潔に整理し、世界史や今の世界の情勢をわかりやすく伝えるといった類いのものではない。だから、このような誤解を招く――ちんけなユダヤ陰謀論にさえ通じてしまうような――帯はそぐわないと思う。
本書の表のテーマは「ユダヤの歴史と思想」だが、裏テーマは「境界」であり、その切断面ないし輪郭線と群島同士をつなぐネットワークのラプソディ(仮縫い)を思考することだ。つまり、大方の予想通り、これは通常の意味での「入門書」ではない。やや極端に言ってしまえば、『入門合田思想:ユダヤの観点から』である。
本書は、ユダヤの歴史やあれこれのキーワードをある程度知っているものの、「ユダヤとは?」という問いを専門的に研究できるわけでもなく、かと言って完全に無視することもできないような人(たとえば、ユダヤと切っても切れぬ縁のある思想家や文学者に関心をもっている者)が、氏の博覧強記を導きとしつつ、ともに思索を巡らせる愉しみの書と言える。不幸な出会いをなるべく減らし、届くべき人に届けるような広報をしてほしいなと思った。それでこそ輝くいぶし銀の良著なのだから。

  • 植村 玄輝、八重樫 徹、吉川 孝編『現代現象学―経験から始める哲学入門』

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本書の登場によって、日本の現象学入門書の色合いが変化し、次なる段階へと進んだ感がある。
これまで現象学入門と言えば、ほぼフッサール入門であり、概ね年代順に認識論や方法論の深化の説明に重点が置かれていたことを考えると、本書の特徴は、真理や価値など伝統的な問題にかんする現象学的なアプローチを紹介している点だろう。まさに「事象そのものへ」であり、“やってみせる”タイプの入門書になっている。
これは執筆者である中堅〜若手研究者が、現象学を噛み砕き、自家薬籠中の物とする高度な理解だけでなく、現象学を越えて様々な現代哲学のトピックにまで貪欲かつ精緻に取り組んできたからこその成果であり、頭が下がるばかりである。
細かな文献情報は本文から外して欄外の注にまわす(かと言って書かぬわけでもない)というスタイルは、読みやすさにもつながっているし、これから本格的に学ぼうとする者にとっては有益な足跡に映るはずだ。
フッサールのみならず、ハイデガーレヴィナスメルロ=ポンティサルトルデリダなど現象学に惹かれた者の思考の根底を知るにも強くおすすめできる一冊になっている。

なお、酒井泰斗さんのプロデュースで、紀伊國屋書店新宿本店にてブックガイドを配布中です。
選者のお一人よりいただきましたが、大変豪華で充実の内容になっています。
酒井泰斗プロデュース「いまこそ事象そのものへ!──現象学からはじめる書棚散策」紀伊國屋書店新宿本店ブックフェア(2017年8月14日~9月30日) - socio-logic

  • 山本 芳久、乙部 延剛(主幹)『nyx』第4号

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特集は「開かれたスコラ哲学」と「分析系政治哲学とその対抗者たち」。
まずは山本芳久先生による稲垣先生へのインタビューを、次に森川先生の大陸系&分析系政治哲学にかんする論考を読んだ。
まだ全部読めておりませんが、トップランナーたちによる濃密度の論考がこんなたくさん読めて2000円なんて良い時代に生まれたなと思うばかり。

  • 清水 高志『実在への殺到』

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9月末発売のハーマン『四方対象』の前にこちらのハーマンの章を読むとより楽しめると同時に、単なる受容を越えて「新しい実在論」をいかに考えるかのヒント出会えるかと思います。
個人的には、これまで触れることが出来ずにいた人類学関連とその背景に繋がるセールの部分を興味深く読みました。

本誌は無料(送料のみ)とのことで送っていただきました。
合田正人レヴィナス著作集における意味とリズムから」が本命でしたが、対談やフィンク、ハイデガーにかんする論文など非常に内容の濃い巻となっています。
詳しい目次はこちらから。